2005年 09月 06日
見解の相違がこの辺にあるのではないかと。 |
琥珀色の戯言 - 本音を書くな 追記
迅速的確なご回答をありがとうございます。
恐らくfujipon先生と私とはこの点で意見を異にしているかと思いますが、私は、ホームレスへの医療(高度先進医療ではなく初期救急レベルの基礎的な医療)への公費負担反対というのは、実際にかなり多くの医師に共有された「本音」かと思っております。これは決してfujipon先生への批判とは受け取って頂きたくないのですが、これが共有された本音であることを否定するのは、あたかも世間に向けてシラを切るようなことではないかと、思います。
以前にもホームレスに関する論争が、あちこちの医療系内外のブログで行われました。あの時も医師の書くブログでホームレス切り捨て論が主張されたのが発端だったと記憶します。案外と医師の書くブログにその意見に賛同する主旨の記事が多くみられ、医療外の方々のブログでむしろ反対意見が多かったように記憶しています。その一連の議論が、ホームレスやニートをメインテーマに扱うサイトにも注目されました。参考までに私が念頭に置いているサイト(といいますか、念頭に置いたサイトのurlが集められているサイト)を列挙しておきます。
エキブロ・メディカル「ホームレスについて考える」
ミッドナイトホームレスブルーPlusOne「名古屋・白川公園でホームレステント撤去」
hotsumaのURLメモ
あの時は私は微温的な感想を一件書いて済ませました。特殊な思想と態度を持った一部医師の独走と信じたい気持ちで居ました。自分も医師のくせに他人事のような見解ですが、もともと小児科は本件では蚊帳の外です。さすがに生保の子は小児科に来るなといった意見は皆無ですし、ホームレスの子どもを公費で治療しましたと言ったところで、なんで子どもがホームレスなんて境遇にあるんだという御意見はあっても、ホームレスの子どもの医療費を公費で賄うなんて勿体ないという御意見は社会中どこを探しても無いと思います。ですから本件が医師の本音であるかどうかに関しては、私ら小児科はむしろ外部から推測する立場にいます。
ですから今回、研修医がホームレス切り捨てに関して肯定的に語ったのには衝撃を受けました。それは彼女がロールモデルとしている指導医たちにも共通する意見である可能性が強いと思いました。特定の医師が直接そんなことを彼女に吹き込んだとは断定できません。でも、彼女はあのようなことを言う医師像を理想的医師像として彼女なりに作り上げてきたのだろうとは言えます。そういう研修を受けてきたのだろうなと思うのは邪推じゃないでしょう。単純無思慮な感想としてか、世間的にはタブーな思想をあえて共有することで仲間意識を高める秘儀的思想としてか、なにさまそれほどまでにホームレス切り捨て論は医師の間に蔓延しているのだと、私は感じました。せめて、「若い頃にはあの落とし穴にはまっちゃうんだよな;克服できて一人前だわ」といった通過儀礼的錯誤として捉えられてあれば、まだマシなのですが。
何にせよ、ガス漏れを察知するには異変を生じるカナリヤは一羽で十分だと思います。
fujipon先生ご賢察の如く、彼女に対して寄せられた「そういう本音を人前で語るな」という助言には、悲しい思いをしました。やはりこれは多くの医師に共有された本音なのだなと感じました。不愉快というより、失望を伴った再確認という感が強かったです。それがホンネなら、また他にもいろいろ「ホンネ」があるようなら、それなら医師はホンネを語っちゃいけないなと思い、医師ブログとホンネの記事を書きました。時系列的にはそういう風に記憶しているのですが・・・それは私の記憶違いで、彼女に「そういうホンネを人前で語るな」との助言がされたのは私のこの記事の後だったでしょうか。サイトが消えると検証も困難で歯痒いですね。ともかく、そうだったとしたら、fujipon先生御言及の「誤解」(前述の如く私は強ち誤解とも言えないと思っています)の責任は私にありそうです。
一方で、「そういうホンネを語るな」という言説に、一定の、実践的な効果はありそうに思います。ホームレス切り捨てといった論は、議論のうえで論破することは可能です。論破どころか、反論を述べられた途端に、「はいはい先生の仰るとおりです」と簡単に折れられることが多いかと思います(必ずしもそうではないのは前回の議論がけっこう大激論になったことからも察せられますが)。でも心中は納得してない、というか、「まーた石頭が正論ふっかけてきやがったよ」と反感を籠めて舌を出されることが多かろうと思います。思うに、こういう酷い内容の論は、人種差別とか民族差別とかにも似て、愚論だけど強烈に聞くものの頭に刷り込まれてくる。たちの悪い耐性菌にも似て、いったん頭にこびりついたら駆逐は極めて困難で、せめて「そういう事を公に言うなよ」と諫めることで伝播を食い止め、世評への悪影響を防ぐという対策が、実践的には最善策なのかも知れません。むろん、ご指摘の如く、それがその集団のホンネだと暗に肯定してしまうというコストは伴いますから、費用対効果の考察は必要ですけれど。
それはそうと。
御言及の、ゾウ嫌いな飼育係Aさんと批判するBさんの対話ですが、Bさんの言動が妥当かどうかは、Aさんの言説の内容自体の倫理的な妥当さや所属集団がその言説を共有することの蓋然性と倫理性に依存すると思います。やっぱり、Aさんの言説内容の検討を抜きにしては語れないのではないかと思います。
迅速的確なご回答をありがとうございます。
恐らくfujipon先生と私とはこの点で意見を異にしているかと思いますが、私は、ホームレスへの医療(高度先進医療ではなく初期救急レベルの基礎的な医療)への公費負担反対というのは、実際にかなり多くの医師に共有された「本音」かと思っております。これは決してfujipon先生への批判とは受け取って頂きたくないのですが、これが共有された本音であることを否定するのは、あたかも世間に向けてシラを切るようなことではないかと、思います。
以前にもホームレスに関する論争が、あちこちの医療系内外のブログで行われました。あの時も医師の書くブログでホームレス切り捨て論が主張されたのが発端だったと記憶します。案外と医師の書くブログにその意見に賛同する主旨の記事が多くみられ、医療外の方々のブログでむしろ反対意見が多かったように記憶しています。その一連の議論が、ホームレスやニートをメインテーマに扱うサイトにも注目されました。参考までに私が念頭に置いているサイト(といいますか、念頭に置いたサイトのurlが集められているサイト)を列挙しておきます。
エキブロ・メディカル「ホームレスについて考える」
ミッドナイトホームレスブルーPlusOne「名古屋・白川公園でホームレステント撤去」
hotsumaのURLメモ
あの時は私は微温的な感想を一件書いて済ませました。特殊な思想と態度を持った一部医師の独走と信じたい気持ちで居ました。自分も医師のくせに他人事のような見解ですが、もともと小児科は本件では蚊帳の外です。さすがに生保の子は小児科に来るなといった意見は皆無ですし、ホームレスの子どもを公費で治療しましたと言ったところで、なんで子どもがホームレスなんて境遇にあるんだという御意見はあっても、ホームレスの子どもの医療費を公費で賄うなんて勿体ないという御意見は社会中どこを探しても無いと思います。ですから本件が医師の本音であるかどうかに関しては、私ら小児科はむしろ外部から推測する立場にいます。
ですから今回、研修医がホームレス切り捨てに関して肯定的に語ったのには衝撃を受けました。それは彼女がロールモデルとしている指導医たちにも共通する意見である可能性が強いと思いました。特定の医師が直接そんなことを彼女に吹き込んだとは断定できません。でも、彼女はあのようなことを言う医師像を理想的医師像として彼女なりに作り上げてきたのだろうとは言えます。そういう研修を受けてきたのだろうなと思うのは邪推じゃないでしょう。単純無思慮な感想としてか、世間的にはタブーな思想をあえて共有することで仲間意識を高める秘儀的思想としてか、なにさまそれほどまでにホームレス切り捨て論は医師の間に蔓延しているのだと、私は感じました。せめて、「若い頃にはあの落とし穴にはまっちゃうんだよな;克服できて一人前だわ」といった通過儀礼的錯誤として捉えられてあれば、まだマシなのですが。
何にせよ、ガス漏れを察知するには異変を生じるカナリヤは一羽で十分だと思います。
fujipon先生ご賢察の如く、彼女に対して寄せられた「そういう本音を人前で語るな」という助言には、悲しい思いをしました。やはりこれは多くの医師に共有された本音なのだなと感じました。不愉快というより、失望を伴った再確認という感が強かったです。それがホンネなら、また他にもいろいろ「ホンネ」があるようなら、それなら医師はホンネを語っちゃいけないなと思い、医師ブログとホンネの記事を書きました。時系列的にはそういう風に記憶しているのですが・・・それは私の記憶違いで、彼女に「そういうホンネを人前で語るな」との助言がされたのは私のこの記事の後だったでしょうか。サイトが消えると検証も困難で歯痒いですね。ともかく、そうだったとしたら、fujipon先生御言及の「誤解」(前述の如く私は強ち誤解とも言えないと思っています)の責任は私にありそうです。
一方で、「そういうホンネを語るな」という言説に、一定の、実践的な効果はありそうに思います。ホームレス切り捨てといった論は、議論のうえで論破することは可能です。論破どころか、反論を述べられた途端に、「はいはい先生の仰るとおりです」と簡単に折れられることが多いかと思います(必ずしもそうではないのは前回の議論がけっこう大激論になったことからも察せられますが)。でも心中は納得してない、というか、「まーた石頭が正論ふっかけてきやがったよ」と反感を籠めて舌を出されることが多かろうと思います。思うに、こういう酷い内容の論は、人種差別とか民族差別とかにも似て、愚論だけど強烈に聞くものの頭に刷り込まれてくる。たちの悪い耐性菌にも似て、いったん頭にこびりついたら駆逐は極めて困難で、せめて「そういう事を公に言うなよ」と諫めることで伝播を食い止め、世評への悪影響を防ぐという対策が、実践的には最善策なのかも知れません。むろん、ご指摘の如く、それがその集団のホンネだと暗に肯定してしまうというコストは伴いますから、費用対効果の考察は必要ですけれど。
それはそうと。
御言及の、ゾウ嫌いな飼育係Aさんと批判するBさんの対話ですが、Bさんの言動が妥当かどうかは、Aさんの言説の内容自体の倫理的な妥当さや所属集団がその言説を共有することの蓋然性と倫理性に依存すると思います。やっぱり、Aさんの言説内容の検討を抜きにしては語れないのではないかと思います。
by yamakaw
| 2005-09-06 17:27