こどものおいしゃさん日記 うしろすがたのしぐれてゆくか

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カテゴリ:日記( 383 )

懐かしの諫早

「最長片道切符の旅」が終わった。昨日はその総集編が放送された。諫早駅が出た。不覚にも涙が出た。もう何年帰っていないかという町。母の故郷。

稚内から肥前山口までの最長片道切符の旅。その肥前山口の終着一歩手前のこの町で私は産まれた。

いきなり死にかけて。ついでに母も殺しかけて。

身長175cm体重59kgの骨格標本のような今の体型からは想像できないと誰もが言うが、私は産まれたとき4kgの巨大児だった。1968年当時、産科医は超音波装置など持っていない。推定体重という今では妊婦の年齢並に当たり前に手にすることのできる数字を、当時の産科医は手にできなかった。

当然のごとく、小柄な女性の膣をとおって産まれるには私は大きすぎた。とんでもない難産だった。危うく母を殺すところだった。私自身も危なかった。当時母が入院していた産院の婦長さんは強引に鉗子だか吸引だかで引き出すことを主張したという。婦長さんの言うとおりにしていたら私は助からなかったと、後で母に耳打ちした助産師が居たという。婦長さんにしてみれば母親だけでも救えと言う心境だったのだろう。

緊急母体搬送のうえ緊急帝王切開で私は分娩された。出生体重4085g。相撲取りにしろというのが母の聞いた第一声だった。母は出血が多くて輸血が必要だった。まだ血液の供給不足で献血手帳を集めてこないと日赤が血液を供給してくれなかった時代だった。

現在ならこんな分娩で母児に何かあったら訴訟ものだ。胎児の体重は分娩までにとっくに分かっているはずだし、身長150cmそこそこの女性が4kgを越える児を初産で出生しようとしているのなら、初めから帝王切開しろよとは言わないまでも、いつでも緊急帝王切開に切り替えられる態勢を取っておくのが当然だろう。血液は当然のごとく同型血の濃厚赤血球が十分量供給できることだろう。今どきこんなことで母児に何かあったら私は産科医の胸ぐらを掴みますよ。

しかし30年以上も前の西の果ての地方都市でのことだ。私と母が受けた医療は奇跡的とも言えるほど充実したものであった。

母方の祖父は裕福ではないにせよその高潔な人格で(とうていこんな日記を書く私の祖父とは思えないが)土地の人望を集めた人であった。母と父が職場結婚した職場は産院のすぐ近所にあり供血者も間に合うタイミングで得られた。多くのことが上手く噛み合った。どの鎖の環が切れても私は死んでいたか重度の心身障害を得ていたか、それとも母の顔も知らずに育っていたかだった。

その祖父も最近世を去った。祖父の死に際しては私も悔いるところがあるしそのうち書くとして、その葬儀で母は私をその当時供血してくださった方に引き合わせた。まだ碌々挨拶もできない若造であった私は無言で頭を下げるばかりだった。

その後いろいろとご縁を得てNICUに勤務することになった。何人かは救ったような気がする。それでも自分の受けた恩を世間に向けて返せた気はしない。総和ではまだ自分の受けた方の恩が大きい。

私が老いる頃には私が分娩に立ち会った子たちが大人になる。私はこの子たちにお願いする立場である。どうか、立派に生きて欲しい。胸を張って生きて欲しい。君たちの人生が充実したものとなりますように。その充実した人生に些かでも関与したものとして私も誇りのお相伴に預からせて欲しい。威張ろうとは思っていないんだ。ただ、諫早に在住の恩人たちに、あのときの赤ん坊が今は他の赤ん坊を救ってますよと、ちょっとばかりいい顔をさせては貰えないだろうか。

むろん、命がけで私を産んでくれた母にも。
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by yamakaw | 2004-06-27 21:54 | 日記

暇なので保育器とオレオレ詐欺について考える

深刻に暇です。けっこう危機的。

重症3軽症3と空床情報にオファーしてあります。普通は1-1とか0-1ですよ。強気の時は重症1軽症1,手一杯で弱気の時は重症0軽症1,暇を自覚し始めたら重症2軽症2です。3-3ってのはひどい数字です。

当直明けにその日のNICU担当業務を9時から初めて10時にはもう暇を託ってますからね。今日は土曜日だから12時には帰り支度を始めますが。

うちはNICU認可病床6床、回復期6床で運用しています。今はNICU2人回復期3人の入院です。一人は長期の人工呼吸管理中ですが他の子らは大抵の医学的問題をクリアしてしまって後は体重が増えるのを待つだけです。看護師さんはそれなりに仕事もするけれど医師としては何にもすることがありません。この状況が続くと大赤字なんで部長は青くなってます。

NICUは看護師さんの忙しさと医師の忙しさのピークがずれる事がよくあります。軽症の子がずらっと揃ってると哺乳のおむつ替えの入浴のと看護師さんは目が回るほど忙しいですがそんな子には医師の手間は一日5分とかかりません。逆に人工呼吸管理・動脈ライン確保して血圧管理・中心静脈からドーパミンとドブタミン投与・末梢静脈から抗生物質とステロイド投与・輸血オーダー中・・・云々と来たら医師は保育器を離れられません。

今は保育器に入っているだけの子すら一人もいない体たらく。

保育器に入ってるだけ・・・そうそう、私らはそう言って済ましてますけどね。せいぜい数日も頂ければ観察期間も終わってコットに出て頂けます、そしたらご入院中のお母様のベッドサイドへも移って頂けます云々、私たちはそんなことを申し上げて親御さんに安心して頂こうとしがちです。でも親の立場では保育器に入っているだけって言われても結構応えますよね。

私は長女が分娩直後に保育器に入れられてるのを見ただけで膝が震えましたよ。

当時の勤務先でほぼ全例の帝王切開に立ち会い新生児入院の全員の主治医をやってた私がですよ、娘が保育器に入っている姿を見ただけでもう立ってられない気分でしたよ。そりゃ素人じゃなし、中に入っている娘が基本的には元気で深刻な心配は要らないってのは分かりましたけどね。でも膝は理性だけでは固定できない関節のようです。

まして「素人」さんがね。

例えば、その状況の親御さんに挨拶もそこそこに何か喋って同意を取り付けようなんて、世間ではそういうのをオレオレ詐欺と呼んで糾弾してますね。医療業界ではインフォームド・コンセントと呼ぶようですが。
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by yamakaw | 2004-06-26 14:20 | 日記

移行?

こどものおいしゃさん日記革新です。

さるさる日記から移行してきました。しばらく運用してみてさるさる並みか以下かの使い勝手ならまたさるさるに戻ります。

ポイントは見た目のかっこよさとサーバの軽さ。
さるさるはサーバは軽いのですが見た目がねえ・・・派手でない。
テキスト内容だけで勝負かけられるほど(って小児科医が何勝負してるん?)強くないんだわ私は。

他のブログサイトにも行き当たっては見たんだけど
そこはサーバがちょっと重かった。
exciteでサーバが重かったりしたら笑っちゃうよね。

真面目な話としてさるさるで日記書いてて一番の不満はトラックバックがないことね。
自分としてはけっこう重大で他の人にも読んで欲しいことを書いてる積もりじゃないですか。
それに対して他の人が何を考えているか是非知りたいんですね。
個人宛には時々メールで感想を頂いてたんですけど
私信って公開するもんではないから話が発展しないじゃないですか。
ある程度は自分でもあれこれお書きで世の中に対するスタンスをあらかじめ公開しておられるような立場から
私が世の中に対して吐き出す愚痴あり挑発ありのごたごたをご評価いただきたいんですね。

所詮は先生商売なんだ。どこかで他人様の目を意識してないと無制限に腐っていくような気がする。

スキンの絵はまあ・・・大学時代がサイバーパンク(ちょっと恥ずかしい)の全盛期でしてね。
仕事でやってる集中治療って分野もこんなイメージかなって思いますし。
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by yamakaw | 2004-06-24 00:50 | 日記