こどものおいしゃさん日記 うしろすがたのしぐれてゆくか

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MRSAの伝染性膿痂疹

先週末から外来でフォローしてました。

いわゆる「とびひ」は小児科の夏の風物詩ではありますが、起因菌がMRSAでした。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌ってやつ。ついにこの日が来たか、という感じでした。別に広域抗生剤など使ったこともない極く普通の乳児のとびひからMRSAが検出される時代になりました。

途方に暮れましたね。

それだけ世間にはMRSAが蔓延してるって事でしょうね。これだけ広域抗菌剤が無闇やたらに処方される時代ではね。夜間に救急外来にお出でになって「近所の先生からこの薬を頂いたんですけど熱が下がらないんです」と仰る親御さんから薬袋を拝借して中を覗いたらまあ出てくるわ出てくるわ、セフゾンのフロモックスのメイアクトの、ちょっと気を利かせたつもりでジスロマックの、もう最新の抗生物質がただの夏風邪に片っ端から処方されてます。その挙げ句、世間の黄色ブドウ球菌や肺炎球菌やインフルエンザ桿菌が、じわじわと抗菌薬への抵抗の仕方を憶えて行きつつあります。

世間のお医者さんに申し上げたい。発熱患者全員に自動的に広域のβラクタムを処方するのはもう止めましょう。咳と聞いたらマクロライドの処方を書くってのももう止めましょう。効かなくなる頃には新しい薬が出るさなどと、同級生をおもしろ半分にぶち殺す中学生みたいな見通しのない精神性を発揮するのはもう止めましょう。片っ端から新薬を作って売って儲けるだけの製薬会社に丁稚扱いされるのはもうプライドにかけて止めましょう。

それともう一つ、言いたいことがあります。





患者を捨てるんじゃねえ!

猫を捨てるなとは書いた記憶がありますが、まさか患者を捨てるなと書くことになるとは思わなかった。

この子どもさんはうちの外来に捨てられていました。開業医さんの外来で、うちでは治す薬がないから××病院へ行って相談しろと言われ、MRSAと記載された検査会社の培養レポート短冊を一枚持たされて、放り出されていました。可哀想に。親御さんよく怒りもせずうちへお出でくださったものです。

自分で治せない患者さんには、その旨をきちんと謝って、紹介状を書いて渡すものではないかと思います。それって最低レベルの礼儀ではないでしょうか。患者さんに対して、ですよ。

そもそも、院外処方箋を書けば外来で処方できる薬の内容は勤務医も開業医も変わらないのではなかったでしょうか。あなたの外来では出せないけれど私の外来でなら出せる薬って思いつけないのですが。それを承知でうちに回したって事は、外来診療ではなく入院させてバンコマイシン使えって暗に求めておられるのでしょうか。でもね、入院を前提のご紹介を、紹介状も無く空床の確認もせずで飛び込み突っ込みで回されても、うちとしては困るんですけど。MRSA感染症を承知の上でそれをやるってのは信義に反するとさえ思いますけど。

それとも、この子を治療するにはどうしたらいいかという医学的方針を全く考えず、私は診ないもーん後はそっちで勝手にねと無責任に判断停止されたのでしょうか。小児科を標榜していてとびひの治療方針を検討すらできないってのは藪に過ぎると私は思いますが。

油断も過ぎると思います。親御さんが、前の医者は治せもせず無礼千万にこの子を放り出したんですとか涙ながらに訴えるかもしれないとは思いませんでしたか? ちなみに私は3日間でこの子を治しましたよ。って、まあ、時期も良くこの子の抵抗力もそれだけ強かったってことでしょうし親御さんが根気よく私の言いつけた通りの治療をなさって下さったからですが。でもね、私と親御さんとの間で、こんな簡単に治るのに前医はなんて藪なんだろうとか、あなた捨てられたも同然ですよこんな簡単な事なのに追い出されたみたいに診療うち切られて、とか、勝手放題な話が盛り上がるかもしれないとは思いませんでしたか?なにか我が身を守るために発言権を留保しておく手段として紹介状を活用しようとは思いませんでしたか?
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by yamakaw | 2004-08-02 19:43 | 日記