こどものおいしゃさん日記 うしろすがたのしぐれてゆくか

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旅行もしてみたいものだと思う

全ての装備を知恵に置き換えること
石川 直樹 / 晶文社
ISBN : 4794966814
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NICUに閉じこもる生活と対比して読むから、北極点から出発して南極点までの旅とか、南太平洋やユーコン川でのカヌー旅行とか、本書前半に記載されてある旅行記に特に惹かれた。

南太平洋で昔ながらのエンジンも羅針盤も使わない航海術を著者は古老に学んでいるという。エンジン付きの船が入ってきてから、身体感覚を駆使する知恵に満ちた航海術が忘れられているとのこと。船の揺れ具合からその波が陸からの反射による波なのか海流なのか潮流なのか(恒常的に流れる海流と潮汐による潮流とは異なるものだとのこと)を判断するとか、聞けば聞くだに神業である。

NICUでも例えば呼吸機能モニター機能付きの高額な人工呼吸器がNICUに導入され始めてから、赤ちゃんの表情と皮膚色を読み胸郭や腹壁の動きを見つつ呼吸音を聞きつつの細やかな人工呼吸の調整ができなくなりつつある、ってことはないだろうか。赤ちゃんの顔じゃなくて人工呼吸器の画面ばかりを見る医者が増えてはいないか?

しかしそれはこの分野に古き良き時代があったという前提があって成り立つ話である。実際のところはそういう話はあんまり聞かない。古老の昔語りにはむしろ、「未熟児は生き延びられたら儲けもの」とでも言わんばかりの粗雑さを感じることが多々ある。最新の機器によって赤ちゃんの呼吸生理が解明されるにつれ、昔ながらに見える身体所見の取り方もむしろ精緻になりつつあるように思える。
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by yamakaw | 2005-12-03 13:17 | 読書