こどものおいしゃさん日記 うしろすがたのしぐれてゆくか

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敬老の日に関連して

私はN先生の最晩年の弟子だと勝手に思っている。

N先生はうちの病院の患者であった。お目に掛かった当時、すでに脳血管障害でか言語はなく、車椅子で移動しておられた。上品な老婦人が車椅子を押しておられたが、奥様であったのだろうか。

私は毎週木曜のリハビリ担当医師と言うことになっていた。週一回お出でになる先生に、お加減は如何ですかと聞くと、いつも実に清々しい笑顔で、片手をちょっと上げて挨拶してくださった。

完全に失語し自力歩行もできなくなった状況でなお、私の如き若造を心服させるような尊厳をお持ちであった。先生にお目に掛かるまでは、私はそのようなことが可能だとさえ思っていなかった。先生の謦咳に接して、このように老いることができるなら、老いるのもそう悪くないかも知れないと思った。

ご高名な先生なのですかとは何となく聞きそびれていた。やがて先生は肺炎で亡くなられた。しばらくして先生の訃報が新聞に載った。反骨の歴史学者であったとのこと。豪快な人格で後進の尊敬を集めておられた由であった。
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by yamakaw | 2004-09-22 18:39 | 日記