こどものおいしゃさん日記 うしろすがたのしぐれてゆくか

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北海道療育園見学

学会2日目の10日午前中に希望者を募って北海道療育園の見学ツアーが行われた。今回の重症心身障害学会を主催した施設である。北海道の重心施設のトップであるという。

実に広々とした施設であった。面積は財産である。量が質に転化するくらいに広い。資産として土地は11万7千平方メートル、約3万坪だと。気が遠くなる。

重心施設というと大抵は地元に嫌われる。建設計画よりも反対運動の組織化の方が余程迅速なくらいである。だがこの施設は「地域の誇りとなる施設」を目指しているという。広々とした敷地を市民一般に公開し、幼稚園の遠足や小中学校の写生会などが絶えず訪れている。園庭には森の中に一流の彫刻家の作品が配置されている。彫刻の業界はよく知らないし作品を見ても本物偽物を云々する教養は私にはないが、展示されている園庭の美しさなど考えれば、おそらく、この森に自作が展示されるってのは彫刻家にとっても名誉になることなのではないかと思う。

地域に対する姿勢を端的に示す言葉が「芝生内立入歓迎」だそうだ。




施設内を飾るために花を植えていたものが次第に近隣へも拡大し、ついには施設に至る公道の両脇に花壇を設置し12kmに渡って花の道が続くことになった。街路が花で溢れていました。その花の苗4万本をこの施設が提供し、地元の人に植えて頂いているとのこと。この分業の絶妙さが憎い。

病棟にはいると広々としたサンルームである。天井はうちの病院の一回の床から床を2枚通して3回の天井を見たらこんなものかと思える高さ。面積はバレーボールのコートが2面くらい取れる広さ。中学校の体育館を思い出した。無論明るい。

床には入所している方々が思い思いに寝ころんだり座ったりしておられる。皆さん表情が明るい。事務職員の方も入所者と抵抗無く挨拶を交わしている。聞き取れる音声言語を語れる方は居られないようにお見受けしたが(それなりの重症者の施設だし)コミュニケーションの基本的なところにはあまり有意語は要らないと見える。

それに異臭がしない。当たり前のことなのだろうか。

うちの病院では3階へ上がってNICUへ入るまで、老人の病室前を歩く。廊下には口臭とも便臭とも膿臭ともつかぬ臭気が立ちこめている。張り切って仕事するぞーと思う朝の気合いがしゅるしゅると萎んでいく。入室者がみんなおむつをしているんだから仕方ないかと思っていたが、同様に入所者の半数以上がおむつを当てているはずの北海道療育園では息をこらえる必要がない。

病室は広く、ベッドがない。柔らかく加工した床の上でみなさん生活しておられる。職員の腰への負担は相当なものだと言うが、それでもベッドを可能な限り廃して床で生活して頂いているとのこと(そりゃ寝るときには布団は敷きますよ。)だから自力移動がある程度できる方なら病室からサンルームへも移動は自由である。

病室には各部屋にソファーがあり、テレビがあり、ヘッドホンで音楽を聴いておられる方もあり(自分で操作しておられた)。病室のアメニティは一流企業の宿泊研修施設を名乗っても通じる秀麗さであった。病室と呼ぶのが形容矛盾であるような気さえした。向かいが詰め所になってるから、まあ病室なんだろうね。

浴室も広い。うちのNICUユニットがすっぽり収まるんじゃないかと思うくらい広い。成人が手足を伸ばして入れる浴槽が縦に三つ並んでいる。うちはNICU改築の設計図に赤ちゃんを入れる浴槽を二つ欲しいといったら一つにしておけと上層部から横やりが入った位である。

廊下には食事の写真が掲示してあった。旨そうな食事だ。流動食すら、一旦は固めて上品に紫蘇の葉をしいて盛りつけてあるから懐石料理の一品のように見える。口に入れると途端にほぐれて流動食になるそうな。流動食の写真を観て食欲が湧いたのは初めてだ。流動食って嘔吐する前だか後だか喰ってみてすら分からなくても仕方ないものだと思っていた。

女子職員の化粧室も美しかった。壁2面が全面鏡張り。テーブルと腰掛け付き。床おきのスタンドに花瓶を据えて一抱えほどもある生け花が飾ってあった。どこかのテレビ局の楽屋かと思った。病室は病室と呼ぶのに抵抗があったが、化粧室は文字通りの化粧室であって、便所の隠語ではなかった。奥では排泄の用も足せたのかも知れないが奥深くまでは覗きに行かなかった。
曰く、職員へのサービスもさることながら、常に自分が入所者の皆さんに接するのに適切な表情をしているかどうか確かめなさいと言う意味もあるそうだ。

作業療法室にプレイステーション2があった。スイッチを改造して肢体不自由の方と遊んでいるそうな。なんか象徴的だなと思った。後々の機能訓練の成果云々も大事だけど、今の生活が楽しいと言うこともとても大事。ソニーも身障者用のスイッチを作ればいいのに。

凄いものを見た。学会そのものは後で抄録を読めばいいが、この施設の凄さは実際に見ないと分からない。
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by yamakaw | 2004-09-12 11:23 | 日記